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あくあたん工房技術書 vol.1 制作後記

Updated at2019-04-30 20:22:15 +0900

これはあくあたん工房GWアドベントカレンダー5日目の記事です。

ごあいさつ

平成が終わり、令和へと突入しました。
あくあたん工房から令和の時代一発目の発信をします。デザイナーのMiyagawaです。

あくあたん工房では4月14日に開催された技術書典6にて、『あくあたん工房技術書 vol.1』を頒布させていただきました。


ブースまで足を運んでくださった方々、そして購入してくださった方々、本当にありがとうございました。

あくあたん工房として初の技術書制作であり、初の同人誌即売会出展でもありました。
平成最初にして平成最後の同人誌!

この記事では、この技術書の制作に編集長兼デザイナーとして関わったMiyagawaが制作後記として、鍋パの日記 制作の経緯や裏話などをお届けします。

ちゃんこ鍋。あるいは闇鍋。

この『あくあたん工房技術書 vol.1』があくあたん工房発行の初の技術書であり、
技術書典6が初の同人誌即売会出展となりました。

掲載した記事は以下のとおりです。全て弊工房のプログラマーが執筆しました。

  • あくあたん工房とは
  • 研究室配属希望調査アプリSaffronを作った
  • ReduxFormで段階的なフォームを作る
  • react-scripts-tsからparcelに乗り換えた話
  • Djoserで高速にWeb API基盤を構築する
  • Androidでデータをセキュアに保存する
  • 大学サークルのゲーム開発プロジェクトを管理している話

記事の方向性?

そんなものはない!

強いて言えば、

自由。

参加したプログラマーが好き勝手に執筆した記事を集めたことから、弊工房内では「ちゃんこ鍋」とか「闇鍋」とか言われています。
上に貼り付けたツイートは出展当日のものですが、外に向かって「ちゃんこ鍋」と言う始末……。

同人誌の本質に最も近い

ですが、個人的にはこれで良いと思っています。初めての技術書ですから。

僕は大学1年生のときから、他のサークルで同人誌制作に関わってきたのですが、この技術書を作るにあたって、今までの制作を思い返しました。
特に、初めて同人誌制作に関わったときのことを。


本全体の一部のページ。
そのページの中のほんの少し。


そんな400文字あるかないかの原稿を書いただけなのに、出来上がった本を見たときは、えらく感動したことを覚えています。

自ら書いた原稿が掲載されて本として仕上がる。

初めての同人誌制作にとって、それだけで十分に価値があります。

あくあたん工房のメンバーは同人誌の制作経験が無い人ばかりなので、自由気ままに書いてもらい、本として仕上がる価値を感じてもらうのが一番だという結論に至りました。

練り上げたコンセプトでがんじがらめにして、あまり書きたくない記事を書いた結果、本が仕上がったものの、何か違う……。
というのは避けたかったのです。

したがって設けた制限は以下の2つだけ。

  1. 原稿表記の統一(記号の全半角や括弧の使い方など)
  2. 見開きに収まるように文字数を調整する

原稿の体裁に関することだけです。内容に関しては完全に自由

売れる鍋ではなく、好きな鍋を作って「鍋パって楽しいやん!」と工房の中で盛り上がることを目指しました。

こうして「ちゃんこ鍋」や「闇鍋」と呼ばれる『あくあたん工房技術書 vol.1』が完成し、我々技術書制作陣は鍋パを楽しみました。

bounenkai.png (375.4 kB)

とても店で出せる鍋ではありません。
しかし、鍋パの様子を見に来てくださった方々、そして「食べてみていい?」と鍋パの輪に加わってくださった方々とは固い握手ができたはずです。

自分が作りたいものを作りたいように作って、「さあ、これが欲しい物好きなやつはいるか?」

というのが同人誌の本質。この考えに従えば、『あくあたん工房技術書 vol.1』は同人誌の本質に最も近いと言っても過言ではないはずです。

具材を煮込むのは狂気のスープ

いい話は十分にしたので、制作の裏側へと踏み込んでいきます。

記事の執筆者である弊工房のプログラマーが好き勝手に具材を用意してくれたわけですが、それらを煮込むスープは狂気からとった出汁だったという話です。

スープ。つまり制作体制のことなんですが、そろそろ鍋の喩えから離れましょう。


この技術書を制作することになった発端は、弊工房の前代表taxioくんです。
そのときのやり取りがこちら。

  • 2019年1月9日(水)20:07 taxioくんが弊工房Slackに#tech_bookチャンネルを開設。
  • 同日20:11 DMで僕宛に技術書典6のサークル参加要項のURLを送ってくる。
  • 嫌な予感がしたので僕は返事をせず無言を貫く。
  • 2019年1月10日(木)17:27 仕方ないので僕はtaxioくんに「???」と返事する。
  • 同日19:49 taxioくん「表紙とかDTP周りをマネジメントしてくれ」とか言う。
  • 同日19:51 僕「アートディレクターやるか~」と言い、参加を表明。
  • 同日20:15 taxioくんが技術書典6の申込を完了する。

さて、ここには3つの狂気が隠れています。探してみてください。
ヒントは「1月9日時点でtaxioくんは就活が終わってて、僕は就活が終わって無いこと」です。

↓答えはこちら↓

狂気1 同人誌を作ろうと言い出すこと。
同人誌制作に5年間関わってきた僕の見解ですが、同人誌は正気の頭で作ってはいけません。赤字の計算と抱えるであろう在庫のことを忘れて作るものです。

狂気2 就活終わった人が、絶賛就活中の人にタスクを投げていること。
taxioは一体何を考えてるんだ?

狂気3 絶賛就活中なのに、3分でタスクを引き受けていること。
僕は一体全体何を考えてるんだ??

狂気1には目を瞑りましょう。同人誌制作の大前提ですから。
狂気2と狂気3は何だ?
どうしてこうなった?
こんなことがあって良いのか?

デザイン ✕ エンジニアリング

今までに経験したことのないカオスな制作体制(むしろ制作体制以前の問題)。
これを乗り切るには一筋縄ではいきません。
就活の手を止めないためにも、僕は技術書制作への労力を最小限にしなければなりません。 

最小の労力で最大の成果を出す。

エンジニアリングの発想です。
そのための救世主がこいつ。

スクリーンショット 2019-04-30 16.14.05.png (39.2 kB)

InDesignです。幸いなことにtaxioくんとpuddingくんがInDesignの使用環境を持っていたので、僕はこの2人とInDesignをフル活用することにしました。

InDesignの機能を活用した制作フローを紹介します。

手順1 誌面設計

スクリーンショット 2019-04-06 1.32.30.png (92.1 kB) taxioくんとpuddingくんが持っていた技術書を参考に、文字のレイアウトを決めます。 参考にしたものよりマージンと行間を広めにとりました。

手順2 段落・文字スタイル設定

スクリーンショット 2019-04-06 1.33.34.png (60.5 kB)

文字の見た目を統一するために、見出しのフォントサイズや箇条書きの書式を決めておき、使い回せるようにします。13種類の段落スタイルと2種類の文字スタイルを設定しました。

これにより、段落スタイルを選ぶクリックひとつで箇条書きの見た目が一発で出来上がります。ソースコードを載せるときも、一発でフォントが変わり、背景にグレーに塗られたりします。これが非常に便利。InDesign最大の発明かも。

これでテンプレートが完成!

手順3 原稿執筆

プログラマーたちが好き勝手書きます。

手順4 ガイドライン作成

スクリーンショット 2019-04-06 1.34.51.png (349.9 kB) スクリーンショット 2019-04-06 1.35.13.png (497.3 kB) テンプレートの使い方や原稿表記のルールを共有して、taxioくんとpuddingくんに仕事を丸ごと投げられるようにします。

手順5 DTP

僕の作ったテンプレートを使ってtaxioくんとpuddingくんが頑張ります。
原稿を流し込み、ガイドラインに沿って段落・文字スタイルを適用していくとデータが仕上がっていきます。

手順6 校正・最終チェック

誤字脱字が無いか、ガイドラインが守られているかをチェックします。
加えて、テンプレートとガイドラインでカバーしきれない細かい体裁を整えます。


以上で技術書がほとんど出来上がってしまいます。

手順3と手順5に僕は関わっていません。
手順5のDTPが一番重い仕事なので、これを丸投げするのがポイント。
丸投げするためにテンプレートとガイドラインがあるのです。

この手順を参考にすれば、皆さんも就活中に同人誌を制作できます!

諦めないで!


技術書典当日

技術書典当日は僕も会場へ足を運び、売り子をさせていただきました。
就活案件が2つあり、その合間を縫って参加したので1時間ほどしかいられませんでしたが、楽しかったです。

想像以上に会場が人だらけなのに加えて、壁サークルが間違って配置されたのではと思うほどの人気サークルが両隣にいらっしゃいました。

技術書典、正直ナメてました。

もっと見つけてもらう工夫や足を止めてもらう仕掛けが必要だと気付かされました。
やはり何事も自分の目で確かめ、体験してみるのが重要ということですね。

ところで、技術書典から次の就活案件に向かう僕に向かって、taxioくんはこう言いました。

「今回の制作レポート書いて公開して。」

まだ狂気を続ける気か?

その後、taxioくんはGWアドベントカレンダーを設立し、「技術書典の参加レポートまだだったよね?」と僕にとどめを刺しました。
こうしてこの記事ができています。

最後に

このように『あくあたん工房技術書 vol.1』は鍋と狂気によって出来上がりました。
現代表のshanpuくんは今後の技術書制作に前向きなので、『あくあたん工房技術書』はvol.2、vol.3と続いていくことでしょう。

vol.1よりもう少し正気の制作になることを願っています。

そして、少しずつ方向性を絞ったり、記事の共通テーマを設けても良いかもしれません。
完全に自由より、制限が加わった方が創造性が生まれるとか言われるので。

今後どんな鍋が出来上がるのかは分かりませんが、皆さんには我々の鍋パを見守り、時には鍋パの輪に加わっていただけますと幸いです。

今回、僕は記事の執筆ができなかったので、次回こそは記事を書きたいですね。

以上、制作後記をお届けしたのは、まだ就活が終わっていないMiyagawaでした! 御社〜〜!!