【Beijing-Tianjin-Hebei Maker Summit 2019】日本人初の出展を果してきました!
Written by Osamu "Sam" Onodera

【Beijing-Tianjin-Hebei Maker Summit 2019】日本人初の出展を果してきました!

2019年11月、中国河北省の石家庄で開催されたメイカー系イベント「Beijing-Tianjin-Hebei Maker Summit Application Form 2019」に、自身の作品を持ち込んで個人出展してきました。こちらはその顛末を記事化したものです。

作品"SharingRC"

上の写真が、今回の展示作の"SharingRC"です。obnizという国産のユニークなマイコンボードを用いて作っています。概要は以下のリンクからご覧いただけますので、ご興味のある方は是非。


ご招待キター:

中国では毎年、メイカー系の大きなイベントが幾つか開催されていますが、その中でも「Shenzhen Maker Faire (深圳)」は代表的なもので、私はこちらに出展の申し込みをしていました。

深圳メイカーフェアの海外出展組は、開催準備の時点から運営やメイカー同士でWeChatグループを使って密に連絡を取り合います。

それは、開催17日前のこと。突然、イベントを運営するChaiho社からグループ宛に、「石家庄のメイカーイベントにご招待するよ」とのアナウンスが流れてきたのです。

その内容は、宿泊費・食費・(深圳発着の)エアチケット・その他交通費のすべてを持つというVIPな条件となっていて、思わず胸が熱くなります!

しかし残念なことに、募集開始のタイミングが直前過ぎて、皆さん、その話に乗るかどうかを躊躇っているご様子。なにせ会期が深圳メイカーフェアの僅か一週間後というのですから、たしかに微妙ですよ…。

結局、海外出展の総勢36組の中から3名が参戦することになります。タイから参加のLoさん、ミャンマーから参加のKishorさん、それと私で。

Beijing-Tianjin-Hebei Maker Summit Application Form 2019


中々、決まらない旅程:

エアチケットの画面キャプチャだけ前もって入手できましたが(なんとコレひとつでチェックインが可能)、それ以外は開催直前まで不明という大らかな状況に翻弄されつつ、まぁご招待ってこんなものなのかな?と、半ば"俎板の鯉"の覚悟を決めながら、ひとり心細く深圳空港の国内線エリアに向かいます。

しかしいざ空港に到着してみると、同じ便に搭乗するKishorさんと合流することができて、ちょっと安心。ここでようやくメイカーイベント参加への実感が湧き始めます。


ドキドキのチェックイン:

今回の移動は中国の国内線ですが、出発時の検査の厳しさたるや、まるで国際線の様相です。

特に、バッテリー関係は厳しい。

予め日本からググっておいた情報では、「バッテリー内蔵のスマホは、電源を切ったうえで預け入れ荷物に入れておいて大丈夫」とあったのですが、実際は、出発や乗り継ぎ時の荷物検査の度に、公安に何度もお呼ばれしました(そのうちの一度は完全なる個室で)。ちなみに中国のそれは、マジガチで怖い雰囲気を漂わせていました。

このように機内にモバイルバッテリーを持ち込む場合は、中国の内外を問わず、どの航空会社でもかなり厳しい対応をします。預け入れ荷物の中はゼッタイにNGで、必ず機内手荷物とすることが義務付けられているケースが殆どです。

さらには、航空会社によって持ち込めるバッテリーの容量や個数にまで固有の決まりがあったりしますので、準備の際にチェックの手間を惜しんでしまうと大変なことになりかねません。

例えば、私が今回利用したアシアナ航空については特に厳しく、バッテリーの容量に関係なく最大5個まで(!)という驚きの規定があります。

私の展示作品は、小容量のバッテリーを短時間でくるくるとローテーションしていく必要があるため、万が一、空港で没収の憂き目にあってしまうと展示自体が不可能になってしまいます。

そこで色々と考えた挙句、持ち込むバッテリーの数を泣く泣く5個まで減らしました。それでも、実際に空港のチェックインが無事に終わるまで緊張を強いられました。

アシアナ航空のモバイルバッテリーの持ち込みルール

ちなみに、国外では「モバイルバッテリー」という言い方はポピュラーではありません。「パワーバンク」が一般的な模様です。


石家庄で日本人初のメイカーとなる:

石家庄市は、北京から270kmほどのところに位置する、人口1078万人の河北省の省都です。

石家庄市

石家庄の空港には既にスタッフが待ち構えてくれていて、他の出展者と合流した後、手配のクルマで速やかに出発。

道中、ツイートでイベントを盛り上げようと思いつきハッシュタグを聞いてみたところ、「一回目なので好きなように命名していいよ」と言われます。今回が初回のイベントで、日本人は私ひとり…。ということでいつの間にか私は、石家庄での日本人メイカーの第一号となっていたのでした (^^)v


イベント前夜:

ウェルカムパーティーでは、イベントの主催者や登壇者と共に、豪勢な夕食で歓待されます。

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そこでは、刷り上がったばかりの公式パンフレットが一足先に配布されていたので、何気なくパラパラと捲っていると、自分の作品がフィーチャーされていてビックリ!これはとても光栄な出来事で、本当に良い思い出となりました。

自分の作品がパンフレットにフィーチャーされてる図

パーティでは、明日登壇される凄いスピーカーの面々に、私の作品を遊んでいただいたりして、イベント本番を前に、この時点で既にテンションがダダ上がりです。

登壇者の方々に遊んで頂いている図


ドキュメンタリーのゲリラ撮影に繰り出す:

パーティの後はLoさんと、ドキュメンタリーのゲリラ撮影のお手伝いで、アドリブで外に繰り出します。彼はメイカー兼ドキュメンタリー映画の監督もやっている非常に面白い方で、昔は、東京でホームレスのドキュメンタリーを撮影したこともあったそう。

時刻は21時を回ったばかりだったのですが、既にデパートやモールは早々と営業を終えていました。周りを見渡しても営業している飲食店はごく僅か。ようやく、開いていたKFCに突撃するも、あえなく店長に追い出されてしまい、この日の撮影はあえなくここで終了。

その後、誰もいない薄ら寒いホテルのロビーで、持ち込んだ"青島生ビール"を片手に人生談義。とても有意義で、思い出深いひとときを過ごすことができました。

メイカー仲間のLoさんとのひととき


イベント一日目:

朝は8時からブースの設営が開始されます。

屋外出展は、国内の学校のロボコン部、地元企業、そして我々メイカー勢。屋内出展は、スポンサーを含む企業勢という区分けです。

屋外展示会場
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ロボコン部の出展者の中には、メカナムホイールを3Dプリンタで出力してくるようなツワモノも!

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ちなみに、この日の気温はたったの2℃で、朝方はなんと-4℃でした。つい昨日は深圳で一日中半袖で過ごせていたのですが…。中国は広いです。

その寒さ故に、屋外組には厳しい試練となりました。ふと気付くと、出展者がいつの間にか少しづつ消えていきます。寒さに慣れている筈の地元企業でさえ、次々と脱落していくこの恐ろしさ。ついに夕方頃には、ロボコン部とメイカーしか残っていないという燦燦たる有様です。

しかし、そんな寒々とするような状況であっても、参加の女子大生軍団や子供達からはチヤホヤされるというホットな一幕もあり、なんとしても最後までやり遂げるんだ!という覚悟が固まります。

参加者の女子大生軍団にチヤホヤされるという
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作品の方は、おかげさまで様々な来場者に興味を持って頂けたようです。

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こちらの初日の様子については、動画でツイートしています。

ちなみに、昨日お会いした豪華スピーカー陣による講演は、我々の展示と並行して、屋内の会場にて粛々と行われていました。

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色々とありましたが、ようやく長かった一日目も無事に終了。明日の展示に備え、作品を倉庫エリアに保管して、会場を後にします。


アドリブで飛び入り登壇する:

この日の夜は、主催者である”CHAIHUO MAKERS”の石家庄オフィスで、アフターパーティーです。

”CHAIHUO MAKERS”の石家庄オフィス

開始早々の出来事。何故か唐突に、飛び入りLTの募集が始まります。登壇の順番は、メイカーを優先するとのこと。

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今でも信じられないのが、自分が咄嗟にこれに挙手したということ。スライドの準備もなければ言葉も通じないという、かなりのアウェーでの思い切った行動で、いま思い返しても自分のどこにそんな勇気があったのかと、赤面してしまいます。

で、その結果ですが…。

日本語と拙い英語のちゃんぽん、かつ内容はアドリブでしたので、意味が伝わっていない自信だけはあったのですが、なぜかそれでもウケてしまい拍手まで頂戴しました。たぶん私の漢気(?)が評価されたのでしょう^^;

英語と日本語での飛び入りLT


二日目の出展が突然取り止めに:

がしかし…。その浮かれ気分も長くは続きませんでした。

パーティの席上、明日の野外出展が急遽キャンセルになったということを知ります。しかも驚くべきはその理由で、「あまりの寒さに人が来ないだろう」と。

そして、「明日はもう別のツアーを組んだので、展示会場には寄らないよ」と。もう意思決定が速すぎて、驚愕の展開に頭が追いつきません (*_*;

……ん?!

…ちょっと待って!

わ、私の作品、まだ会場に預けているんですけど、これはどうしたらいいんでしょう (号泣


Finding my work:

私のあまりに狼狽している怪しい挙動を見かねたのか、出展者サポートのためにわざわざ深圳から同行してくれていたLilyが、すかさず助け舟を出してくれます。「パーティ終了後に二人で作品を回収しに行こう」と。おぉ、彼女からは後光が差して見えますよ!

そしていざ会場に駆けつけてみると、入口の扉は厳重に施錠されていて、簡単には開きそうにありません。直ちにLilyは何処かに電話したかと思うと、入口近くの植木の下に隠されたカギ(お約束?)をさっさと見つけ出して、慣れた手つきでサクッと開錠します。

ブレーカーが落とされて明かりのつかない会場はとても暗く、スマホのLEDだけを頼りに、しまい込まれた私の作品を探さなくてはなりません。

倉庫エリアの場所が中々特定できず、暫くの間ウロウロ、ジタバタしていたところ、たぶん会場の窓から揺れ漏れる怪しげなライトの光線を見たのか、何処からか駆けつけた正義感溢れる近所のおじさん(注:警備員ではない)と、「お前らはどこの誰だ?」的な一悶着が発生。

こちらのLilyはうら若き華奢な女性、対する先方はガタイの良いおじさん。これはもう勝負あったな…と思いきや、なんとLilyはまったく一歩も引く気配を見せず。そして、北京語での激しいバトルを繰り広げ始める二人の様子は、まさに虎と竜。タイガー&ドラゴン。私はもう茫然と見ているだけで何もできず、ただただ行方を見守るだけです。

…その後、数分は経過したでしょうか。最後はおじさんの方が折れて、ようやく無事に作品を回収できたのでした。めでたしめでたし。いやぁ、それにしても彼女はホント逞しいですなぁ(心からの畏敬の念)。


イベント二日目:

そして無事に迎えた二日目。午前中は(たぶん昨日いきなりアテンドされた)地元の有力企業のツアーです。こちらは空気の汚染度や水質など、環境をモニタリングするのが生業の会社です。

二日目の地元企業のツアー

社内見学の展示物には、お約束の(普通なら退屈しそうな)社歴の年表もあったのですが、実はそれが派手でインタラクティブな展示となっていたり、また別の展示では、ガチで収集中の環境データをBIツールで可視化できる仕掛けになっていたりと、思わず日本とのDXに対する取り組み方の違いを感じずにはいられませんでした。

インタラクティブ対応の社歴
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帰路に着く:

午後からは帰路へ着きます。これから一日半で、石家庄 → 杭州 → 深圳 → 仁川 → 成田 の乗り継ぎをこなさなければなりまん。

まずは、急ぎ石家庄の空港に向かいます。石家庄は市内をちょっと抜けるだけで、いわゆる中国北部の既視感のある風景に出会うことができます。

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帰路は深圳へは直行せずに、杭州で一旦乗り換える形の便となります。ちなみにその時は、滑走路からタラップを使って搭乗しました。

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杭州から深圳への移動では、同一のバーコードが印刷された二枚のステッカーを、チケットと預け入れ荷物にそれぞれ貼られ、深圳の到着ゲートを抜ける際に再度チェックされます。ちょっと面倒にも感じるこの仕組みですが、バゲージクレームでの荷物の盗難を防ぐためのアイディアだったんですね!他でも是非やって欲しいです。

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そして帰国:

最後に、ちょっと気になった体験をお伝えして、この記事を締めくくりたいと思います。

香港、石家庄、杭州、深圳、仁川、成田と、各空港のバスターミナルにも立ち寄ってきましたが、一番排気ガス臭かったのがなんと成田空港でした。私が到着したのがバスが集中する時間帯というのもあったとは思いますが、バス停で僅か15分待っていただけでも気持ちが悪くなるレベルです。

その原因のひとつとして、頻繁に出入りを繰り返す近隣ホテルの送迎バスが、かなり年季が入っているというのがあります。参考までに、他の都市ではこのような状況を見かけることはありませんでした(特に中国は電動化が進んでいるためクリーン)。成田空港はれっきとした世界の玄関口。海外からの訪問客の印象を考えた場合、この様な状況は果たしてどうなんでしょうか?

この一面だけを切り取って見ても、日本はもはや相当ヤバい状況に置かれているのかもしれません。今回は本当に、色々と考えさせられる旅となりました。

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